藤原岳(1140m)20192019/07/08 00:38

藤原岳山頂から天狗岩を望む 

藤原岳は名古屋から気軽に日帰りできる山だ。田中澄江の花の百名山に選ばれていて人気の山でもある。しかし、ボクはなぜか40年以上も登っていなかった。20代の頃は何度も登っていたのに。それでもこの山には特別の思い出がある。それは、小野田セメント藤原工場によるカドミウム粉じん汚染公害事件と、それと裁判で闘った藤原町の8人の農民を支援する10年間にわたる活動の思い出だ。
 三重県・藤原町は小野田セメント藤原工場の城下町だった。街中にセメント粉じんが降り注ぎ、工場内を貫通する三岐鉄道の両側では、積もった粉じんの厚さが1cmもあるような状況だった。稲作の収量不振や民家の屋根の雨漏り、冬季の瓦の「凍て割れ」などがセメント粉じんによるものだということを実証するための調査や実験を行った。また、カドミウム汚染米が発生し、その原因がやはりセメント粉じんに起因することを突き止めるために、米や土壌の重金属分析も行った。セメント原料である石灰岩を分析してみるとカドミウム含有量は高くなかった。それがセメント工場のキルンで高温にさらされ、沸点の低いカドミウムが蒸発して、煙突から排出される粉塵に凝縮して高カドミウム含有粉じんが出来るというメカニズムも突き止めることが出来た。
 10年間の裁判闘争は農民側の勝利で終わったが、最大の成果は賠償金獲得ではなく、裁判中に小野田セメントが製造工程の改善に取り組み、煙突から出てくる排煙が透明に変わった事であった。
 さて、今回は名古屋大学医学部大学院生3名を誘っての登山だった。昨年秋の御在所岳や今春の比叡山横断にも付き合ってくれた諸君である。

藤原岳(1140m)2019(2)2019/07/08 00:45


2019年5月19日(日)
メンバー:大沼&大沼、大学院生3名、
コースタイム:
名古屋8:03-(近鉄・三岐鉄道)-9:40西藤原(150m)9:50-大貝戸登山口(160m)10:00-8合目(833m)11:30-避難小屋(10合目・1090m)12:00-12:25頂上(展望台・1140m)12:40-13:00避難小屋(昼食)13:30-8合目14:00-登山口(160m)15:10-15:20西藤原駅15:33-(三岐鉄道・近鉄)-17:30名古屋

藤原岳(113)m)2019(3)2019/07/08 00:47

西藤原駅にて~自転車と一緒に乗ることが出来る~電車正面左上部に自転車マークあり


 近鉄・富田駅で三岐鉄道に乗り換えて、鈴鹿山脈の東側を北上していく。下界は晴れているのだが、あいにく山の稜線は雲の中に頭を突っ込んでいる。やがて前方に藤原岳の急な尾根が見えてきたが、7~800mあたりから上はやっぱり雲の中である。
 東藤原駅から終点西藤原駅までは、セメント工場の中を貫いて電車が走る。粉じんまみれの昔の風景はなく、すっかりきれいになっている。会社名も小野田セメントではなく、太平洋セメントだ。セメント業界再編で、小野田セメント、秩父セメント、日本セメントが合併したのだという。終点に着くと駅員が「すみませんねぇ!我が社はマナカ決済ができませんので、冨田駅からの料金を現金で払ってください。清算は帰りの時に近鉄名古屋駅でやってください。」という。

藤原岳(114)m)2019(4)2019/07/08 00:53

四合目標識


登山口には立派な休憩所があり、駐車場も十分にあった。駅の駐車場と合わせれば50台分くらいはありそうである。登山口には神武神社があり、その右手から登山道が始まる。うっそうとした杉林の急斜面に九十九折れの道が丁寧につけられている。立派な1合ごとに合目看板が付けられていて登山者を励ましている。

藤原岳(115)m)2019(4)2019/07/08 00:59

8合目


下山者がどんどん降りてくる。多くは雨のために途中で引き返した人々であった。さて、我々はどこまで登れるのだろうか。1名の学生が雨具を持ってこなかったことが判明したので、降ってくればUターンである。高度が上がるにつれて雲の中に入ったらしくて、視界が悪くなり、時折ぱらぱらと降ってくる。それでも、それ以上にはならない。