第6次エネルギー基本計画(案)パブコメ意見書2021/09/29 23:54

6)破綻した核燃サイクルを閉じるべきである(P71など)
「もんじゅ」の廃炉が決まって、核燃サイクルはすでにサイクルではなくなっている。サイクルの残骸として残っている再処理・プルサーマルはプルトニウムを増やしリスクと負担を増すだけであり、やめるべきである。
「使用済燃料の処理・処分に関する課題を解決し、将来世代のリスクや負担を軽減するため」などという文言は詭弁である。将来世代への責任を果たすには核燃サイクルの閉鎖と、原発全面廃止によって新たな使用済み核燃料を発生させないことが出発点となるべきである。再処理工場は、重大事故の恐れがあるだけでなく、本格稼働により、トリチウムなどの放射能を日常的に大量に環境に放出する。

第6次エネルギー基本計画(案)パブコメ意見書2021/09/29 23:53

5)汚染水(ALPS処理水)の海洋放出をすべきではない(P9)
 そもそも福島第一原発は放射能の追加放出の権利など無い。放射能量をよう素換算したINES(国際原子力指標尺度)評価によれば、福島第一原発事故で東電は90京Bq(=900ペタBq)(1京=1万兆または10ペタ)の放射能を放出して太平洋と17都県の陸地を過酷に汚染した。世界中の原発が通常運転時に排出している全ての放射能の合計値をはるかに超える放射能を出してしまったのである。その事故炉が事故前の基準に則って年間22兆Bqのトリチウムを流してよいなどと主張することが許されるわけがない。まして、ストロンチウム-90などの核種を告示限界濃度以内なら流してよいなどと言えるわけがない。また、ALPS再処理によってトリチウム以外の核種が完全に除去できる確証がない。また、漁民の反対を押し切るのは政府の約束違反である。

第6次エネルギー基本計画(案)パブコメ意見書2021/09/29 23:51

3)再エネを最大限・最優先で導入するための制度改革が不十分
再エネのような分散型の新規電源を大量導入するには、連系線や周波数変換所の大幅増強、送電網の開放など新規参入電気事業者を支援することが欠かせない。しかるに現状は、動いてもいない原発の稼働時の送電容量を確保して再エネ電源の接続を拒否したりするといった事態や再エネに対する出力抑制などが頻発している。一方、ドイツでは再エネ電源の接続は最優先で保護されている。
送電網増強(P55など)も一定程度述べられているが、不十分である。再エネ電力の出力抑制に対する補償や給電順位の改正など、燃料費がゼロの変動性再エネを公正に扱う抜本的な制度改革が求められる。そもそも送電網の増強やグリッドシステムの強化は、福島事故発生直後から取り組まなければならない課題であった。それを放置してきたのは、政府と官僚(経産省)の怠慢であり、反省すべきである。

第6次エネルギー基本計画(案)パブコメ意見書2021/09/29 23:50

2)2030年の電源構成について(P105など)
再エネの目標は、既存の22-24%と比べれば、36-38%と増加したものの、これは既にドイツが2020年時点で達成した数値である。スペインの74%、ドイツや欧州連合の65%、米カリフォルニア州の60%などの目標と比べて低水準である。このため、原子力は20-22%、石炭火力は19%と、旧態依然の目標値が並ぶ。とりわけ原子力の20-22%は現行目標を維持した数字である(現状実績は6%)。現存する原発がフル稼働する計算になり、非現実的である。また、原発依存度を可能な限り低減するという政府方針にも反する(P7やP25の記述とも矛盾)。石炭火力を26%から19%にしたのは、2030年までにこれを全廃する先進国が多い中で、後ろ向きである。これでは2030年CO2削減目標として掲げた46%の実現は無理である。キメラ的支離滅裂とはまさにこのことなのである。

第6次エネルギー基本計画(案)パブコメ意見書2021/09/29 23:46



経産省が3年ごとに改定作業を行ってきたエネルギー基本計画だが、今回は全く奇妙な計画(案)である。126頁もの大作だが、言ってみれば、まるでキメラのような支離滅裂の計画書となっている。従来はエネ庁が各種業界、とりわけ電力業界や石炭石油業界などエネルギー関連業界との事前すり合わせで調整された計画書が準備されてきた。しかし今回は違った。昨年(2020年)10月、菅首相の国会での突然の温暖化対策に関する2050年カーボンニュートラル(CO2排出量ゼロ)、2030年温暖化ガス46%削減(2013年起点)宣言が発表されたのである。この目標が温暖化防止の目的達成に対して十分なわけではないが、従来の削減目標(26%)と比べれば大盤振る舞いである。内閣府のホームページは「もはや環境対策は経済の制約ではなく、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです。まずは、政府が環境投資で大胆な一歩を踏み出します。」「グリーン成長戦略では、2050年に向け、技術革新を通じて今後の成長が期待される14の産業において、高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取組を明記しました。予算、税、規制改革・標準化、国際連携などあらゆる政策を総動員して、しっかりと取り組んでまいります。」とハイテンションである。しかし、経産省には具体的に目標を達成するための施策も志もなかったのではないだろうか。あるいは、すでにエネルギー業界とのすり合わせが済んでいて、突然の温暖化ガス削減目標大幅アップとの整合性がつけられないままに、お題目だけ並べてお茶を濁したということなのかもしれない。