第3回木曽川流域圏シンポジウムの報告(10)2010/01/12 12:46

 ミゾゴイ

 渡辺さんの話はなおも続いた。名古屋市水道の年間収入は498億円(上水分のみ、そのうち給水収益は459億円)、河村市長は5億円規模の水道料金値下げを提案しているが、その分を水道職員の人件費ほか行財政改革によってカバーしようとしているのだそうである。木曽川が町内を流れているにもかかわらず木曽川の取水権がない御嵩町では、名古屋市民の2倍以上の高額の水道料金を払わされている。安全でおいしい木曽川の水をジャブジャブに使っている名古屋市民の水道料金を下げるのでなく、苦しむ上流域を支援するために値上げする、あるいは水源基金として余分に徴収して上流域に送る、あるいは水源林を購入する方向に進むべき時なのである。このことを市民の側から提案し、実現に向かって積極的に進んでいくべき時なのである。このシンポジウムの終わりにこうした貴重な情報を提供していただき、木曽川水トラストの目指すべき今後の方向性が明確に提示されたように感じられた。その方向性のもとに、御嵩町の皆さんとの連携を一層強め、同時に木曽川上流域全体とのつながりも求めていく必要がある。
 学内の別の教室を利用して開かれた懇親会にも多くの方に参加していただいた。準備不足にもかかわらず、盛りだくさんで消化しきれないくらいの課題と報告者を詰め込んで開催したシンポジウムであったが、結果的には充実したものとなった。報告者の皆さん、参加された皆さん、スタッフで頑張っていただいた方々など全ての皆さんに感謝したい。それらの皆さんとともに、今後は一層、流域の協働と、上下流間に存在する不公平、不条理の解決を目指して進んでいきたい。

第3回木曽川流域圏シンポジウムの報告(9)2010/01/12 12:45

 ハチクマ

 シンポジウム開始以来4時間近くが経過し、参加者に疲れが見えてきた頃にようやく最終の第4部突入。司会がこれまで出た話の簡単なまとめをした後、フロアに発言を求めた。まず、藤前干潟を守る会代表の辻淳夫さんが立って、貧酸素水塊が発生する伊勢湾三河湾の惨状を修復するためには藤前干潟を守るだけではだめで、集水域とりわけ上流域へのまなざしと行動が必要であることに気がついたこと、そのことを契機として伊勢三河湾流域ネットワークが結成されたことなどを話された。本日の資料として配布されたものの中に、このネットワークから出された流域宣言があり、そこでは流域をバイオリージョン(生命圏)としてとらえ、下流から上流を支援する仕組みづくりを求めていることが紹介された。
 続いて名古屋水道労組の渡辺泰委員長から興味深い以下の発言があった。実はすでに名古屋水道労組から名古屋市当局に対して水源林保全の提案がなされている。1914年(大正3年)に始まった名古屋市の水道事業が、2014年で100周年をむかえるので、その記念事業として水源林保全を、格好のテーマとしてほしいと願っている。ただし、木曽川沿線400kmのうちどこに水源林を求めるべきかとなると簡単には決められないだろう。これまで名古屋市が上流自治体として交流事業などを行ってきたのは名古屋市が事業に参加しているダムのある自治体(味噌川ダムのある木祖村や岩屋ダムのある下呂市など)を中心に取り組んでいる。木祖村においては水道局職員の研修が行われ、水道労組も間伐や枝打ちの活動を行っている・・・さらに続けて、柳川さんが紹介された水源林を持つ自治体、東京都や横浜市は独自のダムも保有している。名古屋市も戦時中に藪原ダム建設計画を立てたが、その後沙汰やみとなった。

第3回木曽川流域圏シンポジウムの報告(8)2010/01/12 12:43

 流域自給をつくる大豆畑トラスト」の歴史も10年を超えた。全国にいくつかある大豆畑トラストが遺伝子組み換え作物を食べたくない、輸入や栽培をやめさせるための運動であるが、ここ木曽川流域のトラストはまず「流域自給をつくる」ことを最初に掲げている。この運動を提案し、流域を回って生産者を探し回った故由利厚子さんの呼びかけ文が紹介された。きっかけは御嵩町に計画された巨大産廃処分場問題だったのである。この問題が起きたことによって、流域全体とりわけ下流域から上流域を見るまなざしに覚醒させられたと由利さんは書いている。
 最後は主催団体である木曽川水トラストの木亦さんから、御嵩町での森林ボランティア活動の報告であった。住民投票の後、下流域で集まった寄付金600余万円を御嵩町に役場に持参したところ、当時の柳川町長から御嵩町内に森を買うことをすすめられたことに端を発して、トラストの森「水源の森・みたけ」が誕生し、隣接する民有林で間伐や枝打ちの練習が始まったこと、間伐材で総ヒノキの小屋が建ったこと、3年前からは御嵩町有林3haの整備を引き受けて、毎月2日間ずつの御嵩通いが続いていること、間伐材の木材市場への出荷実験やパルプ材としての出荷なども行っていること、御嵩町のイベント「環境フェア」や「みたけの森祭り」などにも出展して町民との交流を図っていることなどが紹介された。

第3回木曽川流域圏シンポジウムの報告(7)2010/01/12 12:42

 日進市、豊明市、三好町などでつくる中部水道企業団が2001年から1トン1円の水道水源保全基金積み立てを開始し、毎年3000万円のお金を王滝村などの木曽郡木曽広域連合に送っている。東郷町議の山口洋子さんは、第2回木曽川流域圏シンポジウムで聞いた水源基金について東郷町議会で提案したそうである。この提案を聞いていた別の議員が中部水道企業団の議会で提案して水源基金実現の運びになったのである。さらに東郷町では、名古屋市・御岳市民休暇村に宿泊する町民に1泊2000円の補助金を出したり、王滝村に間伐枝打ちボランティアを送ったりしている。この市民休暇村は名古屋市の行政評価でCランクとされ、廃止すべき施設リストに載せられてしまっている。しかし、人口が1000人を切り、公債比率が夕張市を超えて日本一となって苦しむ王滝村にあって、市民休暇村が約100人を雇用しているという状況を考えれば、名古屋市の都合だけで簡単に廃止を決められるべきではない。名古屋市による水源林としての買取、あるいは、名古屋市との飛び地合併なども視野に入れた王滝村支援策が考えられるべきだろうという話も出た。(このあたりで川合ケンさんは、来年夏あたりに休暇村を舞台にしたコンサートを企画してはどうだろうかというアイデアがひらめいたそうである・・・懇親会でうかがった話)

第3回木曽川流域圏シンポジウムの報告(6)2010/01/12 12:41

 その長良川河口堰のまずい水を飲まされている知多半島・東浦町で木曽川水源への復帰を訴えている神谷さん(東浦町議)は、工業用水に回されている木曽川の水を都市用水(飲み水)の管路に流し、長良川の水を工業用水に回すというスワッピング案を図入りで紹介した。すでに管路は全てつながっていて、単にバルブを切り替えれば良いだけの話なのである。現実に長良川上流で化学薬品が流入した時は緊急時対応ということで知多半島の都市用水が木曽川水源に切り替えられたことがあったそうである(2000年の出来事)。水問題はハードでなくソフトだけで解決できることが多いという指摘はとても重要である。水利権をふりかざして水の調整と融通をしようとしない国土交通省や愛知県企業庁は、実に莫大なムダと不条理を生産し続けている。神谷さんの報告でもう一つ素晴らしい指摘があった。「洪水と旱魃は防げない」である。すでに国土交通省は100年に一度来るような洪水は防げないことを認めるようになったが、100年に1度の旱魃については今だにダム建設の言い訳に使って、調整と融通を認めようとしていない。もうダムの時代ではないのである。造りすぎたダムの補修だけでも莫大なお金とエネルギーが必要なのであって、これ以上のダムを造るべきではないのである。これほど説得力のある神谷さんの意見書案が、東浦町議会で自民党と公明党の反対にあって6:13で否決されたそうである。