AP-BON国際ワークショップ2009/07/23 12:10

(ワークショップテキスト表紙:AP-BONはアジア太平洋生物多様性観測ネットワークの略号である)

名古屋大学で2日間にわたって開催されたワークショップに参加した。
生物多様性条約締約国会議COP10が来年名古屋市で開催されるがゆえの、名古屋大学での開催であったようである。
80名ほどの参加者のうち、外国人が約半数。まさに国際ワークショップであったが・・・
一言で言うと、これまで陽が当たらなかった森林生態学研究者たちが急に陽が当たりだしてはしゃいでいるが、内容が伴わない。ポンチ絵で観測態勢の整備、観測データのファイル化、データベース化、わかりやすく加工して政策決定者に提供して生物多様性保全施策に反映させるというストーリーを提示するプレゼンターが相次いだが、生物多様性にとって最大の脅威である開発圧にいかに抵抗するのかの戦略、戦術の提示がない。正直なアジアからのプレゼンターからは、さすがに、美しい絵の提示の後で「お金がない、マンパワーがない」の告白があったが、フロアからそれに関連した議論は沸かなかった。
意外だったのは、40代の日本の研究者の英語が下手だったこと。小生のように60代ならいざ知らず、40代でこの程度というのは驚きだった。
半袖では寒くて震え上がるような冷房が効いた野依ノーベル賞記念ホールでの同時通訳付きのワークショップ、ご親切にもボールペンとレポート用紙が布袋に入って配られるというサービス振り、さすがに環境省主催であると言えばそれまでだが、さぞかしお金がかかっているだろうに・・・それが我々の税金から出ていると思うといささか皮肉な感想を述べたくなってしまった。
来年のCOP10本番では、こういう雰囲気が流れていくのだろうか・・・

AP-BON国際ワークショップ(2)2009/07/23 12:33

(環境省制作の豪華パンフレットの表紙)

実に美しい里山の写真だ。
人が自然に働きかけてつくりだした独特の生態系は世界中にある。
日本の里山は、アジアモンスーン帯に属し、
ブータンや雲南から連なっている一つの典型である。
その保全と維持には、原生自然を守る時のような制限や禁止ではなく、そこで農耕する人々の健全な世代交代が必要である。
この国の政府には、その覚悟が問われている。
しかし、環境省という役所はまるで「色男」
すなわち金と力はないのである。
美しい日本の里山を「Satoyama Initiative」として売り込むのはいいが、
その足下で、里山を持続可能な営みで守り、ともに暮らしてきた
農民がいなくなっている。
車などの工業製品を大量に輸出する代わりに、外国から安い食料を
輸入することによって日本農業をつぶしたのは、
この国の政府と産業界である。
このことの議論と、パラダイム転換がない限り、
美しい里山はまさに絶滅寸前なのである。