石転び沢滑降2006/06/08 00:12

石転び門内沢合流点から
石転び沢・門内沢合流点

石転び沢滑降2006/06/08 00:14

本石転び合流点付近
本石転び沢合流点付近
いよいよ十文字鞍部は近い

石転び沢滑降2006/06/08 00:16

滑り終えて
石転び沢を滑り終えて
雪渓上部は再びガスの中

石転び沢滑降2006/06/08 00:18

温身平のブナ林
温身平のブナ林は美しい

飯豊連峰・石転び沢滑降(2002年5月)2006/06/08 00:20

石転び沢全景
石転び沢全景(出合から)

         
        <飯豊連峰・石転び沢滑降>

今年(2006年)は雪が多く、5月連休に温身平に入るのは難しかったようである。
6月初旬がねらいめであったが、
一昨年から花粉症になってしまって(多分イネ科?)、
くしゃみが怖くて長距離の運転が出来ない。
結局行けずじまいに終わってしまった。
かわりに、2002年の記録を載せることにする。


<メンバー>
徳島、北島、伊藤、栗原、長田、戸川、大沼&大沼、
<コースタイム>
2002年5月17日(雨):名古屋(本郷駅)18:30~(名神,中央道、長野道、上越道、北陸道)~新潟西IC~01:20飯豊山荘
5月18日(雨):石転び沢偵察で滝沢出合付近往復
5月19日(晴):飯豊山荘(405m)8:00~温身平(455m)8:27~8:38砂防ダム(490m)8:45~9:43梅果皮沢雪渓取り付き点610m地点10:05~11:00石転び沢・門内沢出合(910m)11:20~12:08 1310m地点 12:30~13:05北股沢出合13:15~14:05 十文字鞍部避難小屋15:25~15:35 1270m地点 15:40~16:15 雪渓取り付き点16:33~17:18 砂防ダム17:27~18:14飯豊山荘
5月20日(曇り時々雨):飯豊山荘10:00~名古屋18:30
<感想>
 今年は春の訪れが早い。桜前線は例年より2週間も早く列島を北上していった。2年前に石転び沢を滑ったのは6月の第1週だったが、今年は2週間繰り上げてみた。飯豊山荘のオープンも例年より3週間ほど早く、5月上旬だったらしい。
 中央道は激しい雨。50キロ規制がかかったせいばかりではなく、実際にこわくてスピードが出せない。おかげで新潟まで5時間もかかってしまった。それでも北陸道に入ったあたりから雨脚もやや衰えてきたので順調に走り、飯豊山荘着は午前1時20分。名古屋から6時間50分かかったことになる(2年前は6時間だった)。女性組は車の中、男性組は飯豊山荘のバス待ちスペースの屋根の下にテントを張って寝た。
 翌朝はやはり雨。しかもかなりの降りようである。寝袋の中でグダグダしていると、山荘の管理人から誰何されるが、今夕から2泊する予約客である事を告げると一見落着。明るくなってみると、このスペースにはキャンプ用の炊事場もついている。これ幸いとお湯を沸かしたり、ラーメンを作ったりして朝食を食べた。
 雨は一向に上がる気配はない。スキーはあきらめて、傘をさして散歩がてらに雪渓の偵察に出かけることにした。太いブナの森が雨でいっそう活力を増しているように見える。道端に顔をみせているコゴミ、ゼンマイ、ワラビ、ウド、ユキザサなどを摘みながらのんびりと温身平へ。砂防ダムから先は道が相当に荒れている。太い倒木が道を塞いでいたり,雪で押しつぶされた潅木が覆い被さっているところが何ヶ所かある。スキーを担いで登る時は苦戦しそうである。小さい渡渉点では落ちかけのスノーブリッジを迂回しなければならないところもある。
 芳兵衛の平を過ぎてすぐに、眼下に梅果皮沢の雪渓が始まっているのが見える。沢が屈曲したところで左岸に大岩が立っているところのすぐ上流側からは、びっしりと雪が詰まっているのである。この先は道が崩れていて歩きにくいこともわかったので、小さなガリーを伝って雪渓の上に降り立った。標高は600m、十文字鞍部(1900m)からここまで滑れば落差は1300mに及ぶわけである。
 滝沢の出合、梶川の出合とたどって、石転び沢・門内沢出合まであと少しというところまで上がったが,稜線はガスに包まれたままでなにも見えない。ここで本日の行動を打ちきって下山したが、さて明日の天気はどうなるのだろうか。TVの天気予報ではあまりかんばしくなさそうなのであるが…
 翌朝、宿の窓から見上げた空はなんと青い。しまった、こんなことなら朝食をおにぎりにしてもらえばよかった。後悔先に立たずで、結局出発は8時になってしまった。雨のブナ林もいいが、晴れて光り輝く林もいい。背負ったスキーと兼用靴が少し肩にくるが、長靴は今日のアプローチシューズとしてはベスト。ぬかるみ、スノーブリッジ迂回時の藪、細いへつりの道などで兼用靴は実に歩きにくいからである。
 温身平に着くと、滝沢にかかる梅果皮滝から真っ白な烏帽子岳稜線までが見渡せた。砂防ダムを階段で上がるといよいよ山道。木にスキーが引っかからないように時々かがみながらの前進となったが、昨日の偵察が役立って思ったよりも順調に雪渓の上に降り立つことが出来た。ここからは長靴をデポしてシール登行 である。時間はちょうど10時。十文字鞍部からの滑走開始時間を午後3時とすれば5時間の持ち時間がある。
 滝沢の出合を過ぎると門内沢左股が全部見える。右股が途中のノドと言われる部分で急で細いところがあるのに比べればなんの問題もなさそうである。北股岳から門内岳方向へ少し下った所から雪庇のないところを避けて滑り込めばあとは一本道である。次の機会には滑ってみたい。
 石転び沢・門内沢の出合で簡単な昼食を取る。はるか頭上の十文字鞍部めがけて、白い竜が一気にかけあがっている。その上を先行するパーテイーが登っているのが点々と見える。全部で20人ほどであろうか。突然大音響と共に右岸からブロック雪崩れが落ちてきた。本石転び沢出合より少し下がったあたりで、ちょうどそこを歩いていた5人パーテイーが左岸側へ必死で逃げているのが見える。直径が40~50センチもある岩と雪塊が石転び雪渓の上を次々と転がってくる。あんなのに当ったら大変である。
 再び登行開始。さっき雪崩れがあったあたりから傾斜も増してきたが、まだなんとかシールで直登ができる。しかし、このあたりからシールへの信頼感の厚さの差が出てきて、隊列は前後に大きく広がってしまった。本石転び沢出合の少し上、1300m付近で小休止していったん全員集合。登攀用アイゼンを持ってこなかった人や、腰の痛みが出てきた人などが出て、あえて全員が稜線を目指さなくても良いことになった。
 なおもシール登行を続けて北股沢出合(1560m)へ到達。先行パーテイーが滑ってくる。3人ともなかなかの足前である。彼らを見送るとすぐに、今度はピッケル組の一人が上部急斜面を滑落してくる。グリセードの失敗であろうか。なかなか止まらなかったが、北股沢出合の緩傾斜に救われて止まって事無きを得たようである。我々はもう少しシールで頑張れそうであったが、登攀用アイゼンに履き替えてスキーを背負った。あとは十文字鞍部までひたすら直上するだけである。
 次第に傾斜が増してきて頭上には斜面の上端のエッジしか見えなくなる。やがて頭上から声がする。「私ここで動かないでいて良いかしら?」。目を上げると下山中の登山者。ピッケルとアイゼン装備でこわごわ下りてきたようである。先行パーテイーのトレースを彼女に譲って横によけた。
 つらい急登を50分、午後2時、ついに十文字鞍部到着。2年前に工事中だった梅果皮山荘が実に立派に建っていた。馬力のある栗原さんは一人で北股岳頂上へ向かった。小生は小屋の中に入って,郡山から日帰りだという素敵な若いカップルと話す。石転び沢出合あたりから抜いたり抜かれたりしながら登ってきた人達である。信州中野の出身だという彼の方は、東北大学出身で冬の清渓ヒュッテにもよく入るそうである。吾妻連峰や猿倉~白馬大雪渓~雪倉~蓮華温泉~金山沢~猿倉の豪華ツアーコースの話を聞かせてもらった。
 下山予定時間近くなって、なんと全員が十文字鞍部に到着した。こんなことならみんなでそろって登った方が良かったかもしれない。このへんはブナの木スキークラブの「いい加減さ」であり、小生の「いい加減さ」でもある。石転び沢の今日の条件を、さほどの危険はないと判断しての行動ではあったが,別の行動選択もあったかもしれない。
 さて、いよいよ滑降開始。ちょうどガスがまいてきて視界がきかない。同士討ちしないように間隔を取ってスタートを切る。直後に戸川さんが大転倒。流れ止めのバックルが折れてしまった(やっぱりストッパーの標準装着が必要だ)。幸いにもスキーは雪面に突き刺さって流れなかった。最大斜度に入る前だったので事無きを得た。
 気を取りなおして再スタート。幸いにもガスは稜線部分だけだったので眼下には胸のすくような大斜面が広がっているのが見える。全員それなりの豪快なシュプールを決めてぐんぐん下っていく。これだから山スキーはやめられない。例のカップルもこれまたいいスピードで我々を追いぬいてどんどん滑っていった。
 1270m地点で一呼吸入れる。一昨年よりも雪面がフラットに感じられるのはやはり2週間早いせいだろうか。一昨年は1000m以下になるとスプーンカットが形成され始めていて少し滑りにくかったが、今年は全く滑らかである。石転び沢・門内沢の出合から下では数本のクレバスが走っている。それにはまらないように注意しながらなおも下って、あっという間に600m地点、例の大岩の手前のゴールに到着した。
 再び長靴に履き替えて、スキーを背負った。振り返ればすでに稜線部分はガスの中。ほんのちょっと前にはあのガスの中にいて,この大斜面を一気に滑ってきたかと思うと感慨もひとしおである。アルプス三大雪渓といわれる白馬、剣沢、針の木と比べて勝るとも劣らない豪快なスケールの雪渓である。四大雪渓と呼ぶべきかもしれない。小生は今月初旬に剣沢雪渓を平蔵谷の出合いまで滑っているから、同じ月に二つ滑ったことになるが、同行メンバーの中には先週、針の木雪渓も滑っていて、四つのうち三つもやってしまったラッキーな人もいる。
 飯豊山荘はとても良い宿である。食事は豪華とはいえないかもしれないが山菜ずくしで心がこもっている。食事係の女の人達も、おそらくは地元長者が原のお母さんたちがパートで来ているかと思われるがとても感じが良い。山菜の知識も豊富である。風呂は天然温泉で、成分も良好(亡硝、食塩泉)。泉温は44.8度、湧出量も豊富である。これで6800円は安い。
 翌日,早起き組は丸森尾根を少し登って1時間ほどの散歩。朝寝組は朝風呂。昨日首尾良く石転び沢滑降に成功したので全員満足感に満たされている。10時に出発して来た道をそのままたどり,名古屋に夕方6時半に着いた。平均年齢は50代後半,最高齢が67歳という高齢パーテイであったが、実にたくましいツアーとなった。