パブコメを出そう!福島第一原発から汚染水を流すべきではない(2)2020/05/11 12:32

汚染水の海洋拡散シミュレーションについての疑問点

 東電素案では、1500Bq/Lまで希釈した汚染水を1年間流し続けたと仮定して、大型コンピューターで汚染水の拡散状況を計算した結果、トリチウムが1Bq/Lを超えるのは福島第一原発の地先海域を少しふくらませた範囲にとどまるとした図が示されている。
 この計算について超党派議員連盟である原発ゼロの会などが東電に3回にわたる質問書を送ってわかってきたことは以下のとおりであった。

1)「素案で示したのは、長期間放出を続けて、準定常状態になった時の汚染分布図」だと回答している。コンピューター上で、数百回(1年間なら約700潮汐)の潮汐を繰り返させた結果であろう。
 漁民や市民が懸念しているのは、こうした平均値ではない。1日に2回起きる潮汐でも大きさが異なる(春夏は昼に大きく引き、秋冬には夜に大きく引く)。大潮と小潮では干満差が全く違う。黒潮の蛇行も季節変化や年変化が大きい。風の影響、降水量の影響(主として流入河川の影響)なども大きく、沿岸流の方向は逆転することも頻繁に起きている。こうした環境要因の変動ごとに、放出される汚染水塊がどのように拡散するかが知りたいのである。淡水同士でさえも、水塊の混合は簡単ではない。

2)そもそも、600kmx500kmという広い海域について、1km四方のボックスを仮定したモデルで計算し、その結果を福島沿岸域だけ拡大してみせたところに間違いがある。福島沿岸域数10kmに限定した拡散計算を改めてする必要がある。

3)「放出初期条件は、1km x 1km x 7mのボックスを仮定した」としているが、そもそもこのような大きなボックスに汚染水が均等に混合されて、そこから用意ドンで拡散が始まるとした仮定には大きな無理がある。放流条件の検討をすることなしに拡散計算をしたと言わざるを得ない。前項で述べたように、沿岸域数10kmに限定し、放流条件を吟味し、10m四方、あるいは100m四方のボックスを仮定して再計算が必要である。その際、1項で述べたように、平均値でなく、様々な環境要因の変動を考慮したケース毎の計算結果を示すべきである。

4)以上のような注意を払って計算しても、拡散シミュレーションの精度はけっして高くはない。少なくとも複数のモデルで計算して、比較すべきである。また、シミュレーションの確度を保証するのは実測データによる検証であり、パラメーターフィッティングである。その実測データ(素案ではCs-137観測値) の観測頻度、観測網の密度が不足している。鉛直方向の観測も不十分である。

5)海洋拡散モデルには、海洋生態系を組み込んだものが多数提案されている。トリチウム以外の核種はプランクトンに取り込まれて、沈降したり魚に摂食されたりして複雑な挙動をする(トリチウムについても、濃縮・蓄積を示唆する報文もある)。「告示比総和1未満」が安全性を保証するものではない。これらのことについても、再検討が必要である。

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