徳本峠越え2009(1)2009/08/13 23:47

岩魚留小屋にて


島々谷からの徳本峠越えは極めつけのクラシックルートだ!これまで不思議とチャンスがなくて歩いたことがなかった。今回は9月の信大学士山岳会60周年記念ヒマラヤトレッキングに参加する関係から、上高地小梨平の信大キャンプ村を運営する信大山岳部OBと歓談するための上高地入山のついでに登ることにしたのである。

コースタイム:
8/9(日)(夕方から雨) 名古屋19:00-(中央高速)-松本IC-21:30島々谷川林道ゲート前(780m)
8/10(月) (雨のち曇り)起床6:00-出発7:15-8:32二俣(950m)8:40-9:37中間点(1070m)-10:41岩魚留小屋(1300m)11:02-12:24峠沢に入る(1740m)12:36-13;41徳本峠(2130m)14:07-15:13明神(1530m)15:20-15:58小梨平(信大キャンプ村1500m)
8/11(火)(晴れ)出発7:34-8:40焼岳登山口-9:44長い梯子を登った地点(1960m)9:54-10:14焼岳小屋(2050m)-11:32コル(2355m)11:42-11:51焼岳北峰(2393m)12:01-14:04中の湯(1610m)14:25-14:58安房トンネル出口(1350m)15:10-(タクシー)-15:51島々谷ゲート16:00-(国道19号)-20:00名古屋

徳本峠越え2009(2)2009/08/13 23:49

岩魚留小屋の朽ちた玄関

9日は名城公園フラワープラザの展示「名古屋の里山とため池の自然」の最終日。4時から片付けにかかって帰宅したのが午後6時過ぎ。急いで山行きの準備をしてなんとか7時に出発することが出来た。普段なら使わない高速道路だが、今日はどこまで行っても1000円なので松本まで走った。松本ICから上高地線に入るとあっという間に稲核ダムの手前まで入ってしまった。うっかり島々谷の入口を通過してしまったらしい。暗闇に目を凝らしながら戻ると、徳本峠登山口の標識が見つかった。ここから左折して集落の中を走り、島々谷川に沿って少し走ると舗装が終わり、ゲート前に着いた。左手に10数台分の駐車スペースがあるが1台も停まっていない。
 車の中は炎熱地獄だった。雨が降っているので窓も開けられない。それでもうつらうつら眠ったらしく、目がさめて時計を見たら6時だった。外はあいにくのザーザー降り。隣に1台の車があったが釣り人のもので、間もなく帰ってきて竿をたたんで帰っていった。どうやら今日は我々だけがこのコースに入るらしい。ゲートのバーは鍵がかかっていないので持ち上げれば車で入れたが、帰路のことを考えてここから歩くことにした。
急いで朝飯を食べて、傘をさして出発。二俣から山道に変わったので雨具のズボンだけはいた。注意深く沢水の増減や濁りを観察しながらの前進である。古くから多くの人々が往来したルートであるが、何しろ沢伝いの道であるし、初めて歩くコースである。こんなに激しい降りでは何が起きるかわからない。道は比較的整備されているが、ところどころで桟道が落ちていたり、土砂が崩れてきて道が埋まっているようなところもある。それに、高巻きや枝沢越えでは結構なアップダウンがある。橋も長雨で表面がヌルヌル滑って気持ちが悪い。
途中に炭焼き窯跡や石灰採掘跡があった。石灰は酸性化した畑を中和するための土壌改良剤として用いられたとのことで、運搬には牛が使われたそうである。かつて上高地で牛の放牧が行われていたという話を夜の信大OBとの宴会で聞いたが、このことと合わせて牛の能力には感心してしまう。島々谷は大きな滝がない安全な沢ということだろうが、現在のような登山道があったわけでもないだろうに、いったい牛はどこを通っていったのだろうか。ウェストンとそのカミさんが明治中期に上高地に入ったルートも島々谷である。地元民の案内で、まさに牛道をたどったのだろう。
それでも岩魚留小屋にはガイドブックどおりの時間で着いた。小屋はすでに廃屋然としていたが、有難いことに長い庇がかかった縁側があった。ようやく腰を下ろして休憩を取り、軽くお腹を満たすことが出来た。しかも、食事をしているうちに雨がやんでくれたのである。

徳本峠越え(3)2009/08/13 23:52

徳本峠から奥穂高・西穂高の縦走路をのぞむ

岩魚留小屋を出て最初の橋のヌルヌルで滑って本当に転んでしまった。板が新しそうに見えたので油断したのがいけなかった。しかし、ここから先は下りがほとんどなくて気持ちよく高度が稼げる。沢の傾斜が上がったためらしい。時速350mくらいのペースで高度を上げて行き、間もなく峠沢に沿って徳本峠をめざす九十九折れの道になった。やがて頭上から物音がし始め、不思議なエンジン音まで聞こえてきた。しかし、登山口には「徳本峠小屋は営業していません」の看板がかけてあったはずである。
峠に飛び出すと目の前が小屋。ちょうど改修工事中で、大工さんが電動木工具を使っていた。これが謎の音の原因だったのである。上高地側の空は雲がかかっていたが、ジャンダルムから西穂へのとがった尾根の一部が見える。明日は晴れるかもしれない。
峠から上高地までの道はツッカケでも歩けそうな道だった。今日初めての登山者ともすれ違った。明神で梓川沿いのメインストリートに出ると行き交う人々がどっと増えた。小梨平キャンプ場の信大キャンプにつくと、晩御飯までお風呂に入ったらどうですかと言われてびっくり。500円なりでキャンプ場の客相手のこぎれいな銭湯があるのである。思いがけないご馳走に大満足した後は生ビールで乾杯。今日は好い1日だった。

徳本峠越え(4)2009/08/13 23:53

上高地河童橋付近から岳沢、吊り尾根

朝起きると晴れていた。このまま帰るのももったいないので焼岳に登ることにした。登山口まで1時間。あとは涼しい森の中を新中尾峠目指して高度を上げる。焼岳小屋を過ぎたあたりから頂上部分にガスが懸かり、眺望は望めなくなったが気持ちの良い登りで北峰頂上に着いた。山スキーで登る南峰よりも50mほど低い。下りは中の湯に下りた。北峰と南峯の鞍部から積雪期ならボールになる広い谷を下る。山スキーで滑る大斜面が右手に見える。なかなかの急斜面だ。りんどう平から道が分かれる。左の釜トンネルへの道を見送って、中の湯コースに入る。積雪期の登頂ルートである尾根の真上を登山道が走っている。傾斜がゆるむ所は湿地状になっていて、登山道もずぶずぶ状態である。
やがて旧国道を横切って中の湯温泉到着。迷ったがそのまま国道を歩いて安房トンネル出口付近まで下った。中の湯に客を送って降りてきたタクシーをつかまえて、そのまま島々のゲート前へ。良い客をつかまえて運転手はご機嫌である。思ったよりも遠くて約40分もかかってゲート前到着。タクシー代は9000円だった。
今日は平日なので高速道路を避けて国道を走る。波田からサラダ街道を通って洗馬へ出て19号線である。今夜はぶなの木スキークラブの例会がある。なんとか参加できるかもしれないと思ってスタートしたのであるが、高速道路の渋滞で時間切れとなった。雨のち晴れ、まずは充実した山旅だった。(了)